クレイジーイーター | ナノ




9

回復したミカドに、他の子供たちが集まる(むらがる)

「ねえねえピエロさんどうしたの?」
「お前の父さん最近来てねえぞ、つかどうしたのその髪の毛」
「まっしろだ、おじいさんみたい」

その純粋な疑問は当時のミカドからしたら凶器以外の何物でもなく、耳を塞ぎ、鼓膜をぶち抜きたくなる衝動をうわべの笑顔と嘘で取り繕う。その繰り返し。

「ごめんね、わからないんだ」
「そうなの?父さん遠くで仕事してるみたいでね・・・連絡あったらまた言うよ」
「ああ、病気になって白くなっちゃった。でももう治ったよ、おれまだおじいさんじゃないからまだまだみんなと遊べるからね」

酷く優しい言葉(うそ)を吐いては価値のない笑顔を振りまき、崩壊までの一週間までにそれがミカドにとっての普通になってしまっていた。母親にさえ、大丈夫と笑う始末。最初は純粋に誰も喋りかけるなと、父のことなんて知らない、お前等の親じゃないだろうと苛ついていた。それが、恐るべきスピードで変化していき、苛つきは拒絶に変わり、拒絶はやがて虚無に変化した。

(おねがい だれも おれに さわらないで)

嘘と笑顔は、ミカドの盾で鎧で堀で牙で矛で銃口だった。嘘つきでいることが、当然となった。
アラガミに引けをとらないほど急激な変化に、ミカドはどこかで抗ったのかもしれない。
しかし、その抵抗などまるで道端に転がる小石程度で、障害にさえなっていないことも知って。

ミカドは完全な「道化(ペテン)師」と成り果てた。



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