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ミカドが臥せて、二週間。
粗末な一家に異物が運び込まれた。
それはフェンリルが提示した金額が揃えてあるトランクと、父の字で「すまない」と一言書かれた粗末な紙片。
母が声を上げて泣き叫んだのを見たのは、後にも先にもそれだけだ。
とにかくその金でミカドは命を拾った。母も喜んだがその目はどこか気まずさをたたえていた。
ミカドが全快して以前の生活に戻っても、父は二人の前に現れることはなかった。
更に一週間後、ミカドの一家は完全に崩壊することになり、ミカドは元フランスへ送られることになる。
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