4
酷く、殺伐とした光景だった。
しかしただ殺伐しているだけではなく子供と、大人の声が響いている。
「おーにさんこちら、てのなるほうへ!」
崩れ落ちたビルの合間をぬって、白髪の子供が二人の大人に手を振っている。
大人・・・男の方は穏やかに笑って、女の方はとてもやさしそうな笑顔を浮かべている。
酷く、しあわせの詰まった光景だった。
真っ白な天井が視界一面を埋める。
白髪の子供は全身を苦痛で引きつらせていた。大人は片やむせび泣き、片や沈黙を守っている。
「・・・お前は、帝のそばにいてやってくれ」
「あなたは・・・?」
「俺はもう、一緒にはいられないさ」
男の目は、猛禽類の鋭い輝きを放っていた。
[ 54/105 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]