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「さて、今から泳ぎの特訓をする訳だが」
どこか演技かかった口調でレオンはそういった。その目はアリサの持っているものに向けられており、呆れてますと流暢に語っていた。
その目を向けられたアリサはどこかおかしいですかと慌てて聞く。
「・・・アリサ君、それは一体なんだね?」
「え?これですか?浮き輪ですけど」
「今から泳ぐ練習すんのに泳げないやつのための玩具もってくんなよ!」
赤と白のありきたりな浮き輪を手に首をかしげるアリサに、レオンは勢い良く指を差す。人を指差すのはマナー違反ですともっともらしいことを言うアリサに頭を抱えた。
「はあ・・・前途多難だなこりゃ」
「でも、これを使って泳いでいる動画をターミナルで見ましたが・・・」
「違ぇよ、こいつは浮くためだけに使うんだ。泳ぎの練習ならこっちだ」
そういってレオンがアリサに渡したのは白い、発泡スチロールで出来た軽く頼りない板だった。
「・・・これは?」
「ビート版だ。っつっても、お前はまだ使わねえけどな」
訝しげな表情を浮かべたアリサに先に釘を差し、背後で暴走しているコウタとソーマの声と爆発音を聞きながらレオンは口を開いた。
「アリサお前、水に顔つけたり水に漬かったりは平気か?」
「ええ、まあ。お風呂とかでなら。プールは初めてですけど」
「そうか、じゃあまず水の冷たさから慣れるか」
そう言って、レオンはプールサイドに座り込むと足を水につけた。
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