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リンドウは一瞬声をかけるのをためらった。ファイの無表情の目が、熱っぽくぎらぎらと自分の描き続ける絵に向けられているからだ。きっと、リンドウが入ってきたのにも気づいていないのだろう。
「何か用?」
否、気づいていた。しかし、ファイの視線は絵から一行にリンドウに向けられることはない。まるで視界に入れる価値もないと言わんばかりに、そして空気が口で語るよりも流暢に出て行けと言っている。しかしリンドウは動じることもなく、はあとため息をついて本来の目的を口にする。
「ファイ、お前もう少し周りとなじめよ?」
「何故」
「何故って・・・俺達の仕事はチームプレイだぞ?一人がはみ出してちゃ話しにならないだろうが」
「だから何」
「戦闘の時だけじゃない、普段からの交流がいざって時に出るんだ」
「知ったことじゃない」
「知ったことじゃないってなあ・・・」
あまりに頑ななファイの言葉にリンドウはとうとう頭を抱えた。ソーマも大概頑なだがここまでではない。少なくともソーマなりに連携をとろうとしているし、最近はコウタといることが多い。しかし、ファイは完全に孤立している。
どうしたもんかね、とリンドウが呟いた。すると、先ほどまで視線すら向けずさっさと出て行けという雰囲気をかもし出していたファイが近くの小さい机の上に筆とパレットを置くとリンドウの方へ顔を向けた。
「他人なんて知らない。興味がない。関わりたいと思わない。そもそも関わるつもりがない」
それは、16の少女が言うにしては酷く冷め切った言葉だった。
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