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それから小一時間後。
「終わったぁー!」
コウタのこの台詞の通り、ひどい状態だったレオンの部屋はきれいに片付いた。散乱した服やつぶれた卵や野菜もきれいに拭き取られ、来る前よりも片付いている(その言葉の前に「わずかに」と付くが)。調度レオンの方も調理が終わったらしく、流し台の方からする匂いに顔を向ければやはり似合わないエプロン姿で盛り付けを行っているレオンの姿が見えた。
「・・・やっぱり似合わないね」
「うるせえ」
ぼそりと呟かれたコウタの感想がしっかり聞こえていたレオンは、どすの利いた声で呻く。やはり笑ってごめんと謝るコウタに全くとため息をついた。すると、コウタは盛り付けしているレオンに近づく。どうしたんだろうとリンドウとソーマが見ている中、コウタは皿を取り出してレオンの元へ向かった。
「はい、皿」
「あん?」
「盛り付けでしょ?手伝うよ」
二人でやったほうが早いしねと笑うコウタに、一瞬あっけにとられたレオンは、しかし次の瞬間にはにんまり笑って「そうだな、こき使ってやるよ」とコウタを茶化す。コウタも冗談だとわかっているらしくおぉ怖と笑う。
おそらく、コウタの行動は無意識の内だろう。コウタをしっかり育てた母親の賜物だ。
そんな二人の様子をじっと見ていたソーマに、リンドウは苦笑をひとつこぼして口を出した。
「そんなに気になるんだったらお前も手伝えばいいだろう」
「・・・別に、どうだっていい」
「そうかそうか、不器用すぎて逆に食器割っちまうか」
「・・・」
その一言がソーマのプライドを傷つけたのだろう。無言で二人に近づき、強引に皿を奪って準備を手伝うソーマを見ながら、リンドウは素直じゃないねえとタバコをふかした。
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