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その顔がにわかに歪むのを、コウタは見た。
しかし、リンドウの号令で歪んだ表情は瞬く間に消え、いつも通りの感情の薄い顔がリンドウを見上げる。
「ファイをメインにやつらをしとめる。ソーマと俺はファイの援護、コウタは後方支援を頼む」
「了解!」
「・・・わかった」
コウタが元気よく返事を返し、ソーマが静かにうなずくのを確認して、リンドウはファイに向き合った。
若草色の目が、リンドウの深緑の眼を捕らえる。
「ファイ、これだけは言っておく。絶対死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ、運が良ければ隙をついてぶっ殺せ」
「言われずとも殺してやるさ」
そう、冷たく言い放ったファイを見て、コウタは背筋が凍るかと思った。
能面、それ以外どう表現すればいいのかわからないファイの表情。感情は無、私情は皆無。ただ、眼だけが飢えたように爛々と輝いていた。
息を詰めたコウタとは裏腹に、リンドウはひとつため息をついて、オウガテイルを見下ろした。
「ほんじゃ、ぱぱっと終わらせますか」
そういって、飛び降りる。続いてソーマ、コウタが降りていく。最後にファイだけが残った。
一人残されたファイの唇から、確かな声がはっきりと、静まり返った贖罪の街に響き渡る。
「刃を握れ、牙を殺げ、憎悪を携え」
神を 殺せ
その瞬間、少女は少女ではなくなった。
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