クレイジーイーター | ナノ




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下に敷かれた真紅の絨毯の感触を楽しみながらアリサは歩いていた。
この日、別段大きな任務があるわけでも、必要な用事があるわけでもなかったアリサはアナグラ内を歩いて回っている。
でこぼこ新型三人衆より早く極東支部に来たとは言え、アリサも施設をしっかりと把握していたわけではない。必要なところ・・・エントランス、自室、食堂、ラボ区画・・・そのあたりしか把握していないしそれ以外のところはここ最近立て続けに入った任務でいく暇さえなかったのだ。
そんなわけでるんるんのアリサの前に、白髪が座って雑誌を読んでいたところを見つけたときは内心とてもうんざりした。
レオンとかいった大男は荒らそうな性格だったし、ファイとか言う小柄な少女は非常識なところがある。白髪の------そう、ミカドはへらへらしていてなんと言うか、つかみ所がない。
つまり、三人とも苦手な分類の人間なのだ。

と、ミカドがアリサに気がついた。

「あ、こんにちわ」
「・・・どうも」

にこやかに挨拶してくるミカドがどうしても胡散臭く見えて、アリサは思わず低い声を出してしまった。ミカドは別段気にすることもなく散歩ですかと聞いてくる。

「ええ、今日は何もないから」
「そうですか・・・そういえばファイとソーマ君、コウタ君とリンドウさんが初心者任務で出ているそうですもんね」

さらりと第一部隊の面子の名前を言ったミカドに、アリサは内心驚愕を隠せなかった。
彼が入隊して二日立っているが、交流はまだ少ないはずだ。ファイはともかくレオンはコウタとリンドウと仲がよくなっていたが。

「みんなの名前・・・覚えてるんですね」

だからアリサが無意識にそうつぶやくのも無理はなかった。隻眼のこの男も、彼らと同タイプ、詰まるところ馬鹿なのだろうとたかを括っていたから。
ミカドと言えば、照れたように笑い、まだ第一部隊の方たちだけですけどとつぶやく。

「あなたは確か、アリサ=イリーニチナ=アミエーラさんですよね」

そう無邪気に言われて、なんだか自分がとてつもなくいやな人間に思えてアリサの気がさらに重くなる。


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