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しかし、立ち上がろうとしたサクヤの行動は、ファイにスカートの裾を捕まれることによって不可能となる。
サクヤはうんざりと言った表情を何とか隠しながらファイを見る。
無表情に見えるその顔に、困った、がありありと出ていた。
「・・・どうしたの?」
「・・・食堂と、自分の部屋に、いけない」
抑揚のないその声は、どこか頼りなく聞こえ、サクヤはとうとうため息をついた。
成り行きというかなんと言うか、ここまで連れてきたら一緒に食事をするのはほぼ必然で、しかしサクヤは目の前の光景が信じられずにいた。
「・・・朝からよく食べるわね」
「朝しかよく食べないけどな」
それだけ食えばそりゃあ昼・夜抜いたところでたいしたこともないだろうとサクヤは再びため息をついた。
パスタやフライといった非常に重たいものが十数種類、各10人前ずつ並べられ、それが端からきれいに食べられていくその光景に、サクヤの食事の手が止まる。
なんなのだ、この新人は。
サクヤは一口かじっただけのホットサンドを皿に置き、がっくりとうなだれた。
食べてもいないのに胃もたれをしたからに他ならない。
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