2
--------------------------------------------------------------------------------
しかしファイのその台詞は予想の範疇だったらしく、ツバキは特に気にも留めず書注意だけつげ去っていった。ファイ見たく、ツバキの足を引っ掛けてやればよかったとミカドは後悔した。しかし直後ファイはツバキに吹っ飛ばされていたのだが。
そんなことを回想していて、ミカドの意識はレオンの怒号で引き戻される。
しかしその怒号はミカドに対して向けられたものではない。
「馬鹿野郎!!勝手に突っ込むな!!」
それは、ヴァジュラ相手に勇ましく、いや無謀にも突っ込んでいったファイに対して向けられた言葉だった。ミカドもはっとしてファイを見やる。
突っ込んでいったことに心配はない。そんなことよりもファイはあれをやっていないかのが心配だった。
あれは、下手をすればファイだけではなくこの場にいるミカド、レオン、ソーマさえも破滅させかねない諸刃の剣だ。心配したのは自分の身だ。
と、偏食因子によって強化された聴力がファイの声を拾った。
「刃を握れ 牙を・・・」
「ファイストップ!!」
もはやヴァジュラなどどうでもいいと言わんばかりにミカドはファイに向かって叫ぶ。その瞬間ファイの動きがぴたりと止まり、眼前のヴァジュラがファイに向かって前足を振り上げる。間髪入れずにその前足に弾丸を叩き込んだミカドはレオンに向かって叫ぶ。
「何やってるんだ!さっさとファイを引き戻せ!!」
「あぁ!?なんでてめぇの・・・」
「死にたいのか!だったら勝手に死ね!」
自分でも驚いた。こんなにストレートに悪意が口から出たのは久しぶりだったから。
しかし、そんなことにかまけている暇はない。と、ぐずるレオンの代わりにソーマがファイを抱え上げ引き返す。
「離せ貴様!殺すぞ!」
「てめえこそ黙ってろ、耳障りだ」
冷静に返されこれ以上は何を言っても無駄だと判断したファイが口をつぐむ。その様子を見ながらソーマはふんと鼻を鳴らした。
[ 96/105 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]