クレイジーイーター | ナノ




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ざあああと、頼みもしていないのに吹き付ける雨と風に、ミカドは舌打ちをする。
それは、そばにいたソーマとレオンも同じことで舌打ちこそしなかったが忌々しげに空をにらみ上げる。ファイだけはぼんやりあらぬ方向を向いていたが。

「・・・おい」

しばらくして、ソーマが口を開く。来た、とミカドが身構えた。

「三時の方向に一体・・・ヴァジュラだ」



「本日のミッションはお前たち三人に行ってもらう。対象はヴァジュラだ」

エントランスに集められたミカド、レオン、ファイはツバキに告げられた言葉に一瞬疑問符が浮かぶ。(ファイはやはりあらぬ方向を凝視していた)集められてから開口一番にそんなことを言われても納得のできようがないミカドは口を開きかけた。だが、隣にいた男も同じことを考えていたらしい。

「おいおい、俺たち上等兵三人だけでヴァジュラってのはちと厳しいんじゃねえの?」

肩をすくめながら言うもサングラスの奥の黄金は嫌悪の色に染まっている。
ミカドは内心舌打ちをする。
この男とは、どうにも会わない。
それならばミカドが彼に合わせればいいだけのことなのだが(事実詐欺師である彼に他人それぞれにあわせた性格を演じるのは容易い事だ)できない。
初めて顔をあわせた瞬間から、彼から嫌悪を抱いたのだ。
そしてそれは、彼も同じだったらしく自分からミカドに話しかけるということはまったくない。

「安心しろ、保険にソーマを付かせる。今回の目的は第32居住区防衛と目標討伐、および新型ゴットイーター同士の連携確認だ。お前たちのチームワークが試される」
「必要ない」

そう切り捨てたのはファイだった。抑揚のない緑の目が、光の加減かいささか暗くよどんでいる。

レオンもミカドもそれには同感だった。



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