15
やがて泣きつかれたのか眠りこけてしまったファイを医務室へ運んだソーマとコウタはぶらぶらとアナグラ内を歩いていた。二人の顔には絆創膏が張られ、ソーマにいたっては頭にガーゼをつけていた。
と、コウタはにやにやしながらソーマを小突いた。
「ソーマ珍しく大胆だったじゃんか」
「・・・うるせぇ」
自分のしたことに今更恥ずかしくなってきたのかソーマは赤面してそっぽを向く。そんなソーマを見やりにししと笑って、ふとコウタは真剣な顔になった。
「・・・ファイ、もう大丈夫だよな」
「・・・さあな」
「ふーん?まあソーマがあんだけぎゅーってしたんだ。絶対大丈夫だって」
「・・・もう言うな」
「でも、ソーマがあんだけ誰かを落ち着けようとするの初めてだよね」
コウタの鋭さにソーマは軽く舌打ちする。しかし、その口はしっかりと理由をつむいでいた。
「・・・あいつは、俺と似てる」
「へ?」
「出生とかじゃねえ、他人の悪意しか知らねえとこがだ。違うのは、俺にはリンドウにサクヤ、ツバキに・・・今はお前らがいる」
「・・・なんか、今日は素直だね」
「黙れ。・・・あいつには、誰もいなかったろ。自分(てめえ)から拒絶してた俺と違って、求めても誰も与えちゃくれなかったんだ」
下手をしたら、自分もああなっていたのかもしれない。
伸ばした手は、悉く暴力となって帰ってくる。それは、根強い恐怖にしかならなくて。
「多分、あいつが俺たちをかばったのは、助けて欲しかったからなんだろうな」
第一部隊の奴等は底抜けに明るくて暖かくて、無意識に手を伸ばしてしまうところだから。
きっと、初めて自分から出したSOSのシグナルだったんだろう。
視線を落としてそう告げるソーマにコウタはぽかんと口をあける。そんな間抜け面をさらしてからにししと笑って。
「じゃあソーマもファイと当面大丈夫だな」
「は?」
「ソーマの影口叩くやつは俺が残らずぶっ飛ばすし、ファイ叩くやつも俺がぶっ飛ばしてやるよ!そしたら、二人とも笑えるだろ?」
そういってコウタはソーマに拳を突き出す。一瞬呆気にとられたソーマはしかし、さあなと苦笑してコウタの拳に自分のそれをこつんとぶつけた。
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