クレイジーイーター | ナノ




13

本、彫刻等、石、さまざまな凶器を投げつけるファイに、コウタとソーマはファイの感情をはじめて聞いた。

「いや、いや!わたしはえさじゃない!ばけものじゃないから、いやだ、いや、あついの、いたいの!もうなにもしないから!ちゃんということきくから、きいて、いきとめて、うごかないようにするから!だからもうさわらないでやだあああああっ!」

支離滅裂な言葉の羅列は、過去にファイが受けた言葉なのだろう。要約するとこうだ。

死ね化け物 お前は餌なのだと

それを理解した瞬間、ソーマは勢い良く凶器の嵐の中へ飛び込んだ。石が頭に当たり、ペーパーナイフが顔の肉を掻っ攫う。それでも手を伸ばして、ファイを引き寄せた。
途端当たるものが変わり、ファイの手や爪がソーマの腕や首を傷つける。

「ファイ」
「いやいやいぁっはなしていたいのやだはなしてはなせえええっ!!」
「落ち着け!」

ソーマの怒号にファイの体がびくりと跳ね上がる。その隙にファイの手を押さえ込んでソーマは今や恐怖で真っ黒になってしまったファイの目を覗き込む。
光を一切反射しない、暗い深淵の色。
もし自分も目の色が変わるのなら、こんな色になっていたのだろうとソーマは思う。
でも、自分にはリンドウにツバキ、サクヤがいて。彼らが支えになってくれていた。
もちろん照れくさくて本人たちには死んでもいってやらないが、感謝している。
ファイには、いなかったのだ。そう言った自分を支えてくれる存在が。
伸ばされる手は総て暴力でしかなくて、こうやって触れるのさえ恐怖の対象でしかなくなるほどに悪意にさらされて。

自分と違ってこの二つ下の少女は本当にただの人間だというのに化け物と称されて。

「お前は、化け物じゃねえ」
「・・・」
「だから誰もお前を傷つけねえ」
「・・・」
「だからもう、怖がるな」

ほら、コウタもアリサもサクヤもツバキもリンドウも、誰もお前を傷つけようなんてしてないだろ?



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