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「・・・そっからすぐに私は孤児院に拾われて、ミカにあった。ミカはみんなに好かれたが、私はやはり嫌われた。ミカに情けをかけてもらって適当に生きて、そして今年ゴットイーターになった。以上、質問は受け付けない」
ここまで淡々と、教科書でも読んでいるような口調で語り続けたファイを、ソーマとコウタは無言で見ていた。
コウタは純粋にどう声をかけようか困惑していたが、ソーマは違うらしい。
ふと、ファイの首の後ろに手を伸ばし、そして、普段の彼ならば絶対にしないような事をしでかしたのだ。
「そ、ソーマ!?」
驚愕の声を上げたのは当事者であるファイではなく、傍観者側のコウタだった。しかし、声を出さなかっただけでファイも相当驚いたのだ。驚いて、ほんの少しだけ、怖くて。
ソーマの腕の中にすっぽりと納まっている自分がいるなんて信じられなくて。
ソーマの無骨な指が、ファイの下ろしている髪をさらりと梳いて、不器用に撫でて行く。
コウタはその動作が何かとダブっていることに気がついた。誰かに、似ていたその行動は。
(リンドウさんだ・・・)
最初、アラガミと戦うのが怖くて、でも引くに引けなくて、そんな時、リンドウが頭をなでて、まるで自分の子にするように抱きしめて。抱きしめられて無理するなと頭をなでられてコウタは
涙が出るほどひどく、安心したのだ。
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