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夜の帳と貴女の黒なら
どちらが優しく深い闇なのでしょうか
ファイの着ていた黒いワンピースの裾が、結われていない髪が揺れる。素足で荒
野に立っていると言うのに大地は彼女の足を傷付けない。
ぺたんと尻餅をついたフリーズの手を、ファイが掴んで立ち上がらせる。意識が無かった時とは違い、温かい。
いや温かい、ではない。熱いのだ。ファイが焔になってしまったように。
その手を放そうともせず、ファイは激痛に喘ぐローランや、意識を飛ばしたザビィとウルガに近寄った。
「ローランとザビィ運ぶから、ウルガ運んで」
そう言って手を放す。熱かった手のひらからは直ぐに熱が引いて寒かった。
取り敢えず瓦礫の近くに三人を置く。ファイは小声で何か呟くとそこには結界が張られていた。
『…何者ダ』
「先ずはこっちの質問に答えて貰う。アイツらやったのは、お前か」
『ダカラ何ダト言ウノダ!!!』
先程フリーズがした様に邪神は隙を付く様にファイ目掛けて己の力と魔物を襲わせる。
「…そうか」
俯いていたファイが顔を上げる。蒼銀の双眸は、白銀に煌めいて。
刹那。
『ナ…ニィ!?』
いつの間に構えていたのか、ファイの手元にはセイレーンがあった。
そこから発したファイの蒼焔が邪神の力を相殺し、数多の魔物を灰も残さず焼き付くした。
只、その速度が肉眼では捕らえられなかっただけで。
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