双神二重曲奏 | ナノ



1

彼女の握るのはなんだろうか
刃の柄か 死への標か

はたまた自らを愛する男の腕か






『人間ノ分際デ、ヨク此所マデ堪エタモノダ』



悍ましい低い声でそう言った邪神には、情けの様なものまで伺える。しかし、それはまごうことなく偽りなのだ。



『セメテモノ情ケダ…一息ニ逝クガ良イ』



そう言って己の右腕を振り上げる。その手のひらから迸ったのは、絶望。
ローランの部下や他の部隊の人間が断末魔を上げて死んで逝く。
邪神には、それさえも虫の鳴き声に聞こえるらしい。


『…秋晩ニ、聞キタカッタな』
「っふざけるな…!」


それに怒りを示し唸り声を上げたのはフリーズだ。
ザビィもローランもウルガも相手を見据えて逸らさない。
いや、逸らさないのではない。逸らせないのである。
逸らせばその瞬間間違なく死ぬと、第六感が警鐘を鳴らしていたから。


『ホウ…アレデ死ナヌカ…面白イ』
「黙れ下衆野郎!!」


ザビィが吠える。邪神は言葉の内容が気に入らなかったらしい、じろりとザビィを睨みつける。
ねっとりとした視線にザビィは総毛立つ。直に見られた訳じゃないのにローランとウルガも硬直した。





フリーズだけが淡々と邪神を睨付ける。



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