双神二重曲奏 | ナノ



2

ウルガとシャルは楽園【エデン】を歩き回っていた。
と言うのもローランからファイをどうするか聞かれて三人で見てるかと提案した所、ザビィが自分一人で見ると聞かなかった。
その時ローランに毒付かれていたが、それすらうわの外だった。ただずっとファイの顔を見ていた。
馬上であんなことを聞いた後である。
シャルとウルガは何も言えなくなってしまい、じゃあ自分達は買い出しを申し出たのだ。

「…ファイ、大丈夫ですかね……?」

食料の入った袋を抱えていたシャルがぽつりと洩らした。

「…さぁな、ファイのことだから死にゃしねぇだろうが…」
「そんなことは思ってません。ただ…ファイ、ずっと眠ってるから嫌な夢見て無いかなって…」
「…」

ファイの左腕の黒は、楽園【エデン】に着いた頃には左頬にまで侵蝕していた。
あれで大丈夫と無責任に言える訳もなく、ウルガは曖昧に返すしかないのだ。

「シャル?」

気まずい空気のなか、雑踏からシャルを呼ぶ声が聞こた。
暫くして人と人の間からひょこっと桜色の髪をした少女がでてきた。
背中にはシャルと同じく白い翼が四枚生えていた。

少女はシャルの方を見て手を振っている。

「あ…アリア!」
「よかった…無事で…もう死んじゃったかと思った…」

大きな空色の瞳を潤ませ、シャルがアリアと呼んだ少女はへなへなとその場へ座り込んだ。

「もう…心配したんだから…」
「ごめんね、ちゃんとここにいるよ」

何となく居づらくなったウルガはシャルの手から食料をひょいと取ると踵を返してその場を離れようとした。

「う、ウルガさん!?」
「暗くなる前に帰って来いよー、…彼女に宜しく!!」

茶化して叫べば林檎の様に真っ赤な顔をしたシャルがウルガさんっ!!と叫んでいた。
アリアも同じ様に真っ赤なのだから説得力が無いのだが。



(…やることねぇな)

シャルをほっぽって来たウルガは当ても無くうろうろしていた。
買い出しは殆ど終わっている。
と、ウルガの興味を引くには十分な看板が見えた。

それは拳銃、ライフル、ランチャー、ガトリングといった銃火器だった。
機械と言う機械に異常な興味を示し、
尚且つ自分も狙撃手と言うことも手伝ってウルガは銃火器が大好きなのである。
その店のショーケースに飾ってある銃に視界ごと心も奪われた。

(すっげぇやっべぇ超欲しい!!かっけーなオイ!!)

ショーケースにべったり引っ付いて見ていたウルガはこそっと財布の中を覗く。


買い出しは、終わっている。
後は自分の分の所持金か幾らか。



後悔は、したくない派なんだ俺は。



そう心の中で誰と無く言い訳し、意気揚々と店内へ入って行った緑頭を、多数の通行人が見ていたとか。





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