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一方、ザビィとシャルとウルガは別の馬を借りて結構後ろの方を走っていた。
ウルガはともかく馬など見たことも聞いたこと無かったシャルはザビィと相乗りで
ある。
「なあウルちゃん」
「ウルちゃん言うなジジィ」
「なっ、ちょ、その発言は納得いかねぇ!!じゃねぇファイちゃん本当に神様かどうか聞きたいだけだ!!」
乱暴にそう言って、ザビィは溜息をつく。
恐らく聞かれたウルガも溜息をついているだろう。
「…俺が知るかよ」
「だよなぁ…でもさ、実際そうだったとして、なんでファイちゃん混沌【カオス】なんかにいんの?」
「だから俺が知ってる訳ねぇだろ」
「お前気にならないのかよ」
「そりゃあ…なぁ…」
本当は知っておきたい。
例えこの先殺し会うことになっても今は仲間なのだ、と言うのがウルガの正直な所だ。
フリーズもザビィもシャルも、そして自分も、僅かではあるがお互いを分かっていと、少なくともウルガは思っていた。
「んー個人的にはファイちゃんは人でいて欲しいなぁ」
おもむろにザビィがそう口を開いた。
「なんでだよ?」
ウルガが訝しげにそう聞けば、帰って来た答えは実にシンプルで、ザビィらしくない感情的なものだった。
「だってファイちゃんが神様だったら俺様失恋しちゃう」
「はぁ!?」
もちろんウルガはその答えに疑問符をすっ飛ばす。
しかし、おちゃらけた口調とは裏腹に、ザビィの顔が赤くなっている。
「お前…モテるじゃねぇか」
「うーん、そうなんだけどねぇ…なんつーの?抱きたいとかそんなんはないんだよなぁ……」
どんどん尻すぼみしていくザビィなど、見たこと無かった上、まさか生きている内にこんな珍しいものが見れるなんてと、ウルガの空いた口がふさがらない。
「でもさぁ、ファイちゃんがフリーズと一緒にいんの、やだなぁ…」
最後の方はもう独り言状態だった。
「駄目だなぁ俺様重症じゃん。他の女の子じゃ考えたこと無かったのに」
「…」
この手の経験が全くないウルガには何とも言えない。只、ファイが神じゃなければ良いとぼんやり思った。
(…でもさザビィ)
赤い顔で未だにあーだこーだぶつぶつ言っているザビィに、ウルガは心の中だけで問い掛けた。
(ファイが神だったら、どうするつもりなんだよ?)
その問いは、彼には届かなかった。
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