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急げ急げ 疾風のごとく 彼女が灰になる その前に
歩み寄れ歩み寄れ真実に 彼女の魂理解する為に
それでも己の命が惜しければ彼女を恐れることは 忘れるな
ローランがファイとフリーズを乗せ全力で走っている。
その後ろでフリーズはじりじりと熱いファイの左腕を掴んでいた。
肩から爪の先まで黒くなっているファイの左腕は、燻る炭の様だった。
(多分力は神器【セイレーン】のことだ。伝承によれば、ファイアースティレットはこれを自らの武器としたとある。何故ファイアースティレットは力(セイレーン)に認められなかった?いやそれ以前に何故ファイが【セイレーン】を持ち、扱えた?何故今になって灰にしようとしている?)
分からない。ここまで来ると神々に聞いた方が早い領域に達している。
(しかしそこらの低級神じゃ話にもならない…やっぱり文献を漁るしか…ん?)
そう言えば、シャルの主である女神の属を、聞いていない。
後で聞いてみるかとぼんやり考えてフリーズにローランが声を掛ける。
「…君は、神父なんだってね」
「え?あ、はい」
「天使の子が言っていたが…今のファイから何か感じられるか?」
「…いえ、多分シャル君だからこそ気が付いたことだと思います」
「どう言う意味だ?」
「彼は天使で、己の主に使えていた。神にも色々ある。多分、長年感じていた波長と少しでも違うと分かるんじゃないでしょうか」
もちろんこれは只のフリーズの推測だ。
しかしファイのことがある以上たかが推測と放って置く訳にもいかない。
(それにしてもあの姿はなんだ?竜神や鳳凰神ならわかる。でもあれは…その二つを掛け合わせたような…)
「着いたぞ!」
ローランの声で我に返ったフリーズはファイをローランに押し付けて教会目掛けて駆け出す。
ローランが後ろで何か叫んでいたがファイを頼むとだけ返して。
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