双神二重曲奏 | ナノ



1

フリーズが叫んで我に返った一同は、己の身に掛かった血や内腑を慌てて払い落
とす。

そしてぐったりとしたまま動かないファイに近寄った。

「…さっきの竜見たいなの、ファイちゃん…なのか?」
そう口を開いたのはザビィだ。ウルガは勿論、ローランも聞きこそしないが答を

待っている。
「……そうかもしれない」
「そうかもって…お前あれ見てファイって呼んだじゃねぇか」

「何でファイって呼んだのか、自分でも分からない。只…ファイと同じ目してたから」
そこまで言って、フリーズはぐったりと肢体を投げ出す様に気を失っているファ
イを見る。
その左腕は、黒くなっている。

じっとそれを見ていたフリーズば、静かに口を開いた。
「…ファイは、人じゃ無いかもしれない」

「何故そう思う?第一人じゃなかったら彼女は一体何なんだ?」
そう食い付いたのはローランだ。
只一人ファイと戦い、信頼を得、信頼している
人物でもある彼は、ファイが人じゃないなんて有り得ないと言外で言っていた。

そんなローランに、フリーズは静かに言った。

「とある女神の子孫かもしれない」
その言葉に虚を付かれたのはローランだけではない。
傍らにいたウルガも座り込んでフリーズの傷を癒していたシャルもそれに付き添う様にしゃがんでいたザビィもだ。


一瞬落ちた沈黙を破ったのはやはりローランだった。
「そんな馬鹿な話が…」
「ええ。確証はありません。証拠もなければ根拠もない」

「でもよ、フリーズはそう思うんだろ?何でなんだ?」
そう聞いたのはザビィだ。
今だに武器を持ってローランに近寄らない辺り、相当彼を敵視しているらしい。
一方ローランもザビィと同じ事をしていた。

せめて殺気ぐらい隠せよとウルガは言いたかった。

「…神話の一説にあるんだ『炎の短剣抱きしもの やがてその腕は 力に焼かれ 灰となる』…どう言う意味か分かる?」
たかが神話と、笑い飛ばす者はいない。フリーズの緋い目が、真剣だったからだ


口を開いたのは、ウルガだ。
「どう言う…意味だ?」
「焔の短剣を持つ者は、その力に殺されるって事だよ。身も魂も焼き付くされて


もう誰も何も言わない。

フリーズぱ淡々と続ける。
「でもこれは…表で出回っている解釈のひとつでしかない。もうひとつ、俺たち
神官の中にしか出ていない解釈がある」
「…どう言う仕方だ」

「焔の短剣、力を持って支配し滅す」

フリーズが言い切った言葉に愕然とする。
「でも、焔の短剣は力に認めて貰えなくて逆に自分が灰にされた」
「ちょいと待て、それって焔の短剣の話だろ?ファイちゃんと何の関係が…」
「分からない?焔の短剣…直訳してみなよ」

「…ぁ」

みんな同じ文字、そしてそれに連なる人物像が頭に浮き出た。「ファイアースティレット……グランド=ファイアースティレット=ヴァルキュリ
アか!」

ザビィがそう叫んだ。フリーズは尚も続ける。

「そう、この世界【ワールド】の危機に立ち上がった六神将の筆頭にして初代神
王、鬼神竜の眷属の方だ」
「馬鹿な…!歴代最強と呼ばれたあの方の子孫がファイだと!?有り得ない!!」

食って掛かったのはローランで、それを止めたのはシャルの小さな一言だった。

「初めてあった時感じたのは…気のせいじゃなかったんだ…」
「どう言うことだ!」



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