双神二重曲奏 | ナノ



20

その場にいた全員が、何が起きたのか全く把握できなかった。
悲鳴の上がったその場にはファイは居なくて。その代わり、巨大な姿があって。

全身の色は漆黒。翼は大鷲のような堂々としたもので、
先端に行くにつれ赤くグラデーションが掛かっていく。それが4枚。

しかしそれは鳥ではなかった。翼は鳥だったがその形は竜。鬣は赤く、瞳は青い。
黒と赤と蒼。言うまでもなくファイの色。

「ファイ・・・ちゃん・・・?」


ザビィの声に反応してかそれはぐるんと顔を向ける。
呼んだザビィも見られたウルガとローランも、姿を確認したシャルも。
周りに居た全ての生き物が。
恐怖に囚われた。
その生気のない、なにかに渇望したような渇いた瞳に。

ぐるるると、それが喉を鳴らす。
一気に何十人も死んだのはその一瞬後。

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

悲鳴をもかき消す雄たけびは地を揺らした。

その後は、只の「惨劇」だった。
化け物が人を、魔物を食い殺す。只の悲惨な「惨劇」
只突っ立っていたローランに、食いちぎられた腕が当たり
それに見入るように呆然としていたザビィの頭上から大量の血液とともに臓物が降ってくる
動かない足を動かそうと意識していたウルガに脳漿が半分飛び出た頭部が当たる
座り込んでしまったシャルの純白の羽はドス黒く染められていた。
その中でフリーズだけがそれを真っ直ぐ見ていた
そして立ち上がる



[ 63/164 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -