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それが崩れたのは、些細な事だった。
いくら回復が効くからと走り回っていて、皆がファイのように体力まで無限にあるわけではない。
疲労が溜まってシャルがこけたのだ。
其処を狙って敵の斧がシャルに迫る。
誰も間に合わない位置に居て、目の前の敵を見据えていて気が付かなくて。
気が付いたのはファイとフリーズで。でもファイは間に合わない位置に居て。
「シャル・・・っ!」
ファイが眼を見開いて固まった。振り下ろされた斧が捕らえた獲物は、シャルじゃない。
フリーズだった。
「かはっ・・・」
「っフリーズさん!!!」
シャルが悲鳴のよう声で叫んだ。
フリーズの背中からは止めどなく鮮血があふれ出す。
内臓を傷つけたのか口からも血を吐いていた。
シャルの声を聞いてローランたちも気付いたらしい。
敵に止めを刺して駆け寄ってくる。
皆がフリーズを案ずる中でファイだけが縫いとめられたように動けなくなっていた。
刹那。
―――ドクン
「・・・っぁ・・・・!」
――ドクン
――ロセ
ファイがその場で膝を突く。胸が、心臓が捕まれたように苦しくて。
―ドクン
―ロセ
「く・・・ぁ・・・!」
「ファイちゃん?」
ザビィがファイのうめき声に気が付いて振り向いた。
ドクン
コロセ
ドクン
コロセ
ドクン
コロセ
ド
コ
ク
ロ
ン
セ
!
テキヲ キズツケタテキヲ ホフリコロセ !!!
「っいやあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
骨の砕ける音がした。
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