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この世に価値のあるものなど無い。この混沌の地において命の価値などさほど重要ではない。
一体誰がそんなクソすばらしいことを言ったんだか。全く其の通りだくそったれめ。
あか、くろ、はいいろ、其処にはそれだけしか色がなかった。
あか、赤、紅、朱―――――――人の断末魔とともに散らばる体液
くろ、黒、漆、―――――絶望と屑星すら輝かせない漆黒の闇
はい、灰、廃――――――廃墟と命(ひと)の残骸(ほね)
そんな処。太陽なんて無いし、人情なんてもの存在すら許さないから人々の笑顔なんてもってのほか。
死に掛けたら最後、死んで風化していくだけ。其の後は何も残らない。
そんなところだった。天から生まれたばかりの赤子が捨てられたのは。
勝手に危険因子と決め付けられ、自分が誰なのか、何者でなぜ生まれたかさえ知らない。
こんな処に捨てるなんて、信じられない。完全に生き残りなど出来はしない。
生き残りなど、できないはずだったのだ。
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