15
ローランが援護に来たのはザビィをいたぶっていた連中を、
ウルガが完膚なきまでに叩きのめした後だった。
「う・・・ウルガ君?」
「・・・あ゛?」
「これ・・・全部君が?」
「あ」
「無自覚でやっちゃった?」
無言でこくこくと頷くウルガの血塗れの姿を見てローランははあと溜め息をついた。
「で、仲間は見つかったのかい?」
「そうだ、ザビィ!!」
思い出したように結界の方に駆け寄った。そこにはすでに空気と化しているザビィが呆れたようにウルガを見ていた。
「おい、生きてるか?」
「お前に止め刺された気がする」
「は?何もしてねぇぞ?」
本気で疑問符を飛ばしているウルガの元に、馬から下りたローランが近寄った。
「ウルガ君、君の仲間っ・・・て・・・」
ローランがザビィを見て、硬直する。一方ザビィもローランと目が合うなり全身で威嚇した。
「え・・・ローランさん?・・・ザビィ?」
一気に緊迫した空気に、ウルガは困惑するしかない。
「知り合い・・・なのか?」
「知り合いも何も・・・そいつは敵だよ、ウルガ君」
「何言ってやがる・・・ウルガ、そいつに近寄るな」
お互いにらみ合う目には、激しい憎悪と侮蔑が込められていた。
ウルガには全く事情が分からない。
ただ、多少なりとも慕っているもの同士が敵意を抱いている事に不安を感じていた。
「なあ・・・どうしたんだよ・・・?こんな所で喧嘩してたら囲まれ・・・」
「ゴメン、ちょっと黙ってて」
「お前は引っ込んでろ」
ローランとザビィに静かに、威圧的に言われウルガは頭にきた。
「知るかよ、まずこっから出ないとヤバイだろ?」
「そんなこと、後でいい」
「それに、フリーズとシャル手当てしないと」
「コイツに借りる手なんてねえよ」
いつもの軽い雰囲気は皆無。ウルガは腹を立てることすら出来ない。
「・・・丁度いい、此処で息の根止めてやる《金色の虎》・・・!!」
「こっちの台詞だ・・・《赤乱の獅子》・・・!!」
ザビィがそういったのを火蓋に一気に飛び掛る。狙うのは、相手の喉、そして心臓。
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