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「おい、もうこれくらいにしねえと死んじまうぜ?」
「そりゃ困る、大事な商品だ。傷ものにしちまうと売れなくなるな」
「そうなったら俺らで頂いて殺しゃいいんだよ!!」
「いいなそ」
最後まで言い終わる前に男の一人が絶命する。いきなりの事態に他の連中が慌てふためいた。
「な、なんだ、何が起きやがった!?」
「何がじゃねえよ、カス」
不機嫌そうな声が背後から聞こえ、確認しようと男が振り向こうとした。確認は、出来なかった。
その前に、目から矢を打ち込まれ脳天を貫かれていたから。
「なんだてめえ!!」
「いちいち騒ぐなよ、おっさん」
「うるせえ!!何モンだって聞いてんだよ!」
「いや、通りすがりの弓兵だよ。其処のウザイ三つ編みのおっさん取りに来ただけだ」
ザビィは目を見開いて突然の助太刀の姿を見て呟いた。
「う・・・るが・・・」
「なーにぼろぼろになってんだよ、アンタらしくも無い」
ざわめく周りをまるで空気のような扱いで、ウルガはザビィの元へ歩いていく。膝をつき、ザビィを結界の元へ運んだ。
「くそ、アンタ重たい。太ってんじゃねえの?」
「・・・太った・・・かも・・・」
ウルガがわざと悪態をついたことによってか、ザビィも冗談で返すくらいの余裕が出来た。しかし、状況は変わらない。
「ッおいシカトこいてんじゃねえよ!!」
「たかが一人援軍が来た位で調子のってんじゃねえぞもやし野郎が!!」
「あ?俺19だけど?今もやしでもまだ成長盛りだけど??」
「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」
挑発に自分の年齢を明かしたウルガに男達はいっせいに疑問符を上げる。
「な、なんだよ・・・」
「おい、俺あいつの事29くらいだと思ってたよ・・・・」
「俺は32くらいだな・・・」
「いやいやあの顔は30後半でいいくらいだろ?」
どうやら男達はウルガが思ったよりすっっっっっっっっごく若い事に驚いていたらしい。
「・・・おい、それどう言う意味だ?ああ?」
「結論から言うとだな、おまえ、老け顔」
その瞬間ぶっつりと、豪快にウルガの血管が切れた。
そこからのウルガの動きは目に留まらぬ速さとはこのことかと思うくらい早かった。
指の間に矢を4本挟み、そのまま弓に番える。
一瞬無言になったウルガは、しかし次の瞬間には鬼の形相で矢を放っていた。
「だれが老け顔だ脳味噌ボロカスどもがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
放たれた4本の矢は、見事に急所を貫いていく。その後も留まることなく矢が打たれていく。
至近距離ならと近づいた奴にはウルガ渾身の右ストレートが入ってノックアウト。
弓を使うまでも無いような中途半端な距離は短刀で切り裂くなど、弓兵とは到底思えない戦い方だった。
そんなめちゃくちゃな戦い方をするウルガを遠目に見やり、ザビィはもしフリーズとシャルが起きていれば恐らく言ったであろう言葉をぼそりと呟いた。
「挑発・・・されてんのそっちじゃねぇか」
そんな呟きは、もちろんウルガに届くはずは無い。
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