双神二重曲奏 | ナノ



11

「ローラン殿!!」

ようやく酔いのさめたファイが、ウルガとローランに説得されて謝りに行くかと準備していたころ、ローランの部下である騎士の一人が慌しく飛び込んできた。

「どうした」
「竜狩りのロウェンと鬼殺しのセルンが交戦!!近辺で戦闘が勃発しております!!」 
「何だと・・・!?規模は!」
「今までの小競り合いとは、全く違います・・・!」
「ちぃ!!各隊に連絡!!我々も急いで鎮圧に向かうぞ!!」
「はっ!」

騎士は来たときと同じように慌しく出て行く。
ローランも店の奥へ準備しに行こうとしたときだった。

「ローラン、俺もやる」

ファイが静かに言った。

「駄目だ、君の出る幕は無い」
「何・・・?」
「規模が、全く異なるんだ、今までよりも遥かに危険だ」

どうやらファイはローランと何度か戦っているらしい。推測しか出来ないウルガは二人のやり取りを聞くだけだ。

「・・・誰に言っている」
「もちろん君にだよ、ファイ」
「なめてるのか?」
「君こそ過信かい?」

ローランの先程までの柔和な雰囲気が一気に硬くなる。
隊長としての威厳が前面に出される。しかしファイには効かないのか、堂々と言い返す。

「過信だと?」
「君は自分が強いと思っているね、たった一人、自分だけが」
「当たり前だ」
「ふざけるな。そんな奴に誰が背中を任せたいと思う?確かに君は強い。だが、仲間の出来た今その強さは君個人だけの力じゃない。そんなことに気が付かない者を、俺の部隊の人間として出すわけには行かない」
「・・・」
「今回は大人しくここで・・・」
「待ってろと?冗談じゃない」
「冗談に聞こえたのか」
「ああ、時間の無い今言うタイミングじゃないジョークに聞こえたよ」
「・・・じゃあはっきり言ってやろう。今のお前は足手まといだ。ウルガ君のがよっぽど強い。」

ファイには理解できなかった。今までローランがこんな言い方をしてファイを戦場に向かう事を反対しなかった。それが何故。

「勝手に来たら、俺は君を敵とみなす。そうなったら・・・俺はお前を殺す」

今まで聴いたこと無いローランの声音に、ファイはもちろん、ウルガも凍った。

「な・・・んで・・・」
「・・・今の君に必要な事をしっかり考えるんだよ・・・ウルガ君、付き合ってもらってもいいかい?」
「お、おう・・・」

ウルガは呆然と突っ立っているファイをちらりと見て、それっきりファイを見ることも無くローランについていった。

「・・・俺に、必要な事だと・・・・・・・・!?」

何の変哲も無い床を見ながらファイは呻く様に呟いた。握りこまれたその手からは、掌の皮膚に食い込んだ爪の後から血が滴り落ちていた。



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