双神二重曲奏 | ナノ



3

しかしそれは錯覚だった。実際は腕を振り上げたそのままの格好で絶命していた。何故か。
それは、獣人の頭部から伸びてている槍だった。ついで発される声。

「ようウルちゃん、とってもぴんちだったなぁ〜」
「・・・げ」
「ザビィ!!」

嬉しそうなフリーズと苦々しい顔をしたウルガを傍目にザビィはずるりと槍を引き抜く。そのまま後ろにいた獣人に回し蹴りを叩き込む。

「何で後衛2人が最前線で戦ってんのよ?」
「・・・」
「ハイウルちゃん無視ー!!」
「はは・・・今うちの前衛がどっかいっちゃって・・・」
「はぁ!?どんな前衛よそれ!!」
「えっと・・・紅い髪の毛の・・・」
「ふりーずんそれ違うから!!特徴じゃなくてどんな思考回路かって話!!」
「えーと・・・結構俺様・・・」
「・・・これまた何でそんなのと一緒なんさ?」

間の抜けた会話の中でも、どんどん敵が減ってきている。ザビィが切り込み取りこぼしたのをシャルが片付けていく。2人が対応できないものはフリーズとウルガが確実に倒していった。
10分後、無数にいると思われた獣人の群れが全て屍と化した。

「ふぃー・・・お掃除終了ー」
「全く・・・矢が殆どなくなっちまった・・・」

ザビィとウルガのそんな言葉にシャルが吹く。そこでやっとザビィがシャルの存在に気が付いた。

「んあ?お前確かファイちゃんの連れの天使っ子じゃね?」
「・・・今気が付いたんですか?貴方の援護、一応してたんですけど・・・・・・」
「すまん、全く持って気が付かなかった!!」

しゅんと、翼をしならせて落ち込むシャルを傍目にフリーズがザビィに話しかけた。

「ファイを知ってるの?」
「ああ。俺っちの仕事手伝ってもらってんよ?こっそり仕掛けた発信機辿ってここまできた・・・」
「ほう、発信機か」
「!!?」

ザビィがぎぎぎと音を立てながらゆっくりと、ゆっくりと後ろに振り向いた。
其処には全身血塗れで仁王立ちしている、鬼と化したファイが指をぼきぼきと不吉に鳴らしていた。
フリーズは止めようとして諸手を上げるが止めるすべが見つからず、
ウルガとシャルについては我関せずと明後日の方向を見ている。

(くそ!!薄情者め!!)
「其の話、詳しく聞こうかザビィ?」
「は・・・はひ?」

にったりと笑ったファイに、ああ結構レアな笑顔だなーと現実逃避したザビィに、ファイの拳骨が顔面に食い込んでいた。




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