10
「ん・・・」
うっすらと目蓋を開けたフリーズは真上の紅い髪が自分の顔に触れているのに気が付いた。
「ファイさん・・・?」
「よう。起きたか神父」
フリーズはそこでファイに膝枕をしてもらっている事に気が付く。
ついでにファイが女性である事も思い出した。
慌てて起きようとしたがファイに押し返されてしまった。
「もう少し、寝てろ」
「しかし・・・」
正直な話、照れくさいのと恥ずかしいので即刻起き上がってしまいたかったが
善意で寝ていろと言われている為、其の気持ちを無下にはしたくなかった。
止めは、ファイのこの一言。
「お前の寝顔は綺麗だから見ていて飽きない」
「!」
ずっと見られていた羞恥心があふれる
同時にファイの冷静な蒼銀の眼が揺れてこちらを見たのが酷く美しいと思った。
「見てないでくださいよ・・・」
「いいだろう、別に減るもんでもない」
「こっちの気持ちの問題です」
「なら、其の喋り方やめろ」
ファイのいきなりの敬語やめろ発言にフリーズは頭に疑問符を飛ばす。
「・・・どう関係が?」
「こっちの気持ちの問題だ」
「・・・・・・分かったよ」
フリーズは諦めたように素の話かたに変える。
視界いっぱいにファイの満足そうな微笑があった。
「最初から、そう話せ」
「・・・それはこれから一緒にいろってこと?」
「好きにしろよ」
聞きたいことは山ほどあった。でもどうしてだろう
フリーズが起きれくれた事に喜びを示している自分に理解できなかったファイ。
ファイとこれからも一緒にいられると狂い喜んだ自分に戦慄したフリーズ。
共通したのはほのかに甘く苦い感覚だった。
役者はそろった。悲劇の舞台の幕を上げよう。
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