双神二重曲奏 | ナノ



9

奇妙な音程で、魔物が断末魔を上げたと思ったら瞬く間に灰に還っていく。
それを見届けた後、フリーズはその場で膝を付いて喘ぐ。ファイは呆然と突っ立っていた。
呼吸するごとに体力を酷く消耗するのを自覚する。

「な・・・んだ・・・今のは・・・」
「・・・謳だ」

そう答えたのはフリーズでなくシャルに支えられているウルガだった。
頭からは血が流れており、左足がありえない方向に曲がっている。それ以外は擦り傷だ。
ファイは立っていられなくなり、その場に座り込む。

「謳・・・?」
「この世界【ワールド】には・・・特殊な音程を持つ奴が生まれる・・・そういう奴を唄謳いっつーんだ」

いてぇと繰り返し言うウルガにまだ息の荒いフリーズがよろめきながらも回復魔法を施す。

「おい・・・無理すんなよ」
「大・・・丈夫・・・」

ふらふらになりながらもウルガの怪我を完治させるとフリーズは意識を手放す。
近くに居たファイが慌てて立ち上がり抱きとめるも尻餅を付いてしまう。

「大丈夫か?フリーズ寝ちまったけど」
「・・・なんとか・・・で、こいつは唄謳いなのか」
「いや、あんたもだろ」

ウルガが怪訝そうにファイを見る。

「は?」
「あんたも唄謳いなんだろ?」
「いや・・・違う・・・」
「唄ってたじゃねえか」

ファイはやっぱ自分のことしらなすぎると思った。
其の答えを今は眠り続ける蒼い神父が持っている気がした。



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