双神二重曲奏 | ナノ



7

「なあ神父」
「はい?」
「自分は何者なのか・・・考えた事はあるか」
「・・・そう、ですね。良く考えたら無いのかもしれませんね」
「それは何故だ」
「それは・・・自分が何の子供で何の力を持っているのか本能で理解しているからかもしれません。
もしくは自分が自分であると言い切れる自信があるからか、それとも知りたくないから考えないのか」
「・・・お前はどれなんだ」
「俺・・・私ですか?私はきっと胸を張って私の父母を知っている、
其の二人が私を生み愛でてくれた・・・そう信じているからでしょうね、きっと」
「・・・不確かだな。きっとだなんて」
「こんな疑問は不確かなくらいがちょうどいいのかもしれませんよ?
すべて知りたいなんて、それこそ傲慢だ」
「俺は自分のことは何も知らん」
「記憶が抜けておられるんですか?」
「記憶が無いんじゃない、正真正銘知らないんだよ。何ひとつ」
「・・・と言いますと?」
「俺の最初の記憶は真っ赤な自分と何処の誰かとも知れん人間の死体だけだ」

何故、初対面でこんな事を疑問に持ち、こんな事を初対面の人間に話しているのか。
ファイは自分の行動に不信感さえ抱いた。
それはコイツが神父と言う役職であるからだろうか、
それとも一目見たときに感じたなんとも言いようの無いあの感覚の所為なのか。

「では聞きますが、貴方はその記憶に満足していますか?」
「え・・・?」
「今の何もない自分に、不安を感じるんですか?」
「それは・・・」

ファイは何も答えられなかった。
記憶の無い自分、親を知らない自分、何も無い自分。
満足なのか不安なのか分からない。
何が満足で、何が不安なのかさえ分からない。いや、しらなかったから。

「・・・其の問いに関する答えを俺は持たない。
何も知らないことに疑問を持った事はなかったからな。でも・・・」

ファイが続きを言う前に異変が起こった。
廃れていた教会の屋根が消えたのだ。ゴオオォォンという鈍い音を立てて。

「何だ!?何が起こった!?」
「ファイ!フリーズさん!!」

動揺した二人の前にシャルが勢い良く駆け込んでくる。

「どうしたのシャル君!?」
「白い・・・大きなモンスターが・・・!!今ウルガさんが応戦してるけどもたないよ!!」
「ちぃ!!」

それだけ聞くとファイは疾風のように飛び出していく。フリーズとシャルが其の後に続く。
 



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