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「なるほど、そういう経緯でしたか」
あの後、本気で暴れそうになったファイをその場に居た3人が全力で阻止し、
まあお互い名前も知らないじゃないですか、自己紹介でもしません?
とフリーズが話をそらしに掛かったが、返って怒らせてしまいウルガが何気なしに
本当は心配だったんだろうとボそりともらし止めにそんなに怒ったら嫌われるぜと
いってようやく収まったというわけだ。
「そうも何も、コイツの視野の狭さが問題なんだ、徐々に強くはなってきてはいるが」
半壊しかけの長いすに腰掛け頬杖を付くファイ。
視線の先にはウルガと遊んでいるシャルが居る。
それを見やりファイは其処さえ直せば良いのにとぼやく。
「そこはファイさんの手腕の見せ所ですよ、弟子の強さは師によるといいます」
反対側の長いすに座っているフリーズがにっこり笑って無自覚に毒を吐く。
ファイは渋面を保ったままそうだけどと言葉を濁す。
「それに叱る・怒るだけでは人も天使も伸びません。
良いところを見つけ其処を伸ばす事もしてあげないと才能は開花してくれません」
「・・・俺に怒るなと?そんな無茶な」
「無茶ではありませんよ、現に貴方の教えであの子の力は伸びている。
あなた自身もう少し変わるべきなのですよ」
フリーズは優しく笑って諭す。
諭されているファイはうーむ・・・と腕を組んで考え込んでいる。
正直な話、ファイには良く分からなかった。
こうやって諭されるのも初めてだし、弟子を持ったのもましてや旅の道連れなど連れたことも無い。
今まで自分がどれだけ一人になれているのか思い知った気がした。
ふと、ファイは自分は何で旅などしているのだろうと思った。
この世界はあまりにも汚すぎる。
其の深部からが自分の最初の記憶で良く考えたら自分の事さえ何も知らない。
何故、自分の記憶はあんなところから始まって、何も知らない事に疑問を持たなかったのだろうか。
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