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遡る事一刻前。
「グアアアアア!!」
「シャル!!そっちに行ったぞ!」
「はっはい!!」
巨大蜘蛛の一撃をいなしたファイはサポートに回っていたシャルに向かって額に血管を浮かせて怒鳴る。
そもそもこんな面倒な事になったのは剣の鍛錬をしていたシャルが誤って巨大蜘蛛の足を切り落としてしまったからだ。
シャルに悪意が無かったとはいえ、ファイの怒りは当然シャルの方に向く。
手を出されたら問答無用で切り刻むファイ言えども仕事以外で自分から殺しに行く事は無い。
(本人曰く面倒くさいからだそうだ)
シャルは二本の剣を構えて突進してくる蜘蛛へと構える。
蜘蛛の突進攻撃をギリギリでかわし、無防備になった足へ剣撃を繰り出す。
「はぁっ!!」
「ッギャアアアアアアアアアアアアア!!!」
紫色の体液が飛沫となって当たりに飛び散る。
同時に耳障り極まりない絶叫が雑音となってファイとシャルの鼓膜を破らんと暴れた。
聴覚に大きなダメージを受け怯んだファイに渾身の一撃を喰らわせる。
「うわっ!!」
「ファイ!!ッ!?」
ファイに気を取られたシャルにどうやって曲がったんだと聞きたくなる勢いでターンした巨大蜘蛛が
シャルを引き倒しそのままどこかへ暴走していった。
「シャル!!チイッ!!」
先程より更に機嫌の悪くなったファイは蜘蛛が爆走して行った方向へ全力疾走。
「あんの馬鹿天使後で私刑(リンチ)だ!!」
そんな物騒な事を叫びながら。
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