双神二重曲奏 | ナノ



12

一旦砦へ帰って食料だの衣服だの金だのを持てるだけ奪ったファイは、そのまま近くの川原まで天使を連れて移動していた。
一応結界を施し再び砦に戻ると魔法で燃やした。
天然の要塞と名高いこの砦も問答無用で浴びせられる業火と内側からの爆風には堪えたようで呆気なく灰と化していく。
ファイは、無感動にそれを眺めていた。

再び川原。
天使はまだ気が付いてないようで、昏々と眠り続けている。ファイはぼろぼろになった服を脱ぎ捨て川の浅い所で浸かる。
四季で言う秋に当たる今、お世辞にも気持ちいいとはいえ無い。
寧ろ冷たすぎて体中が少し痛い。
しかしファイは冷たいものが好きだった。
風呂に入ってるかのように悠々と肩まで使っている。
体のそこかしこに付いている血を拭っていたときだった。

「んぅ・・・」

どうやら天使が起きたらしく背後で小さな呻き声が聞こえた。
ファイが振り向くと矢張り天使は起きていた。
ぼうっとこちらを見ていた天使はファイを見てもぼうっとしていた。

「お前、気分は?」
「・・・」
「怪我はしたのか?」
「・・・」
「・・・」

何も答えない天使に段々イラ付いてきたファイはもう知るかと川のほうに視線を戻す。
聞いても無い答えが返ってきたのはほんの少し後。

「・・・・・・・女神・・・さま?」
「・・・は?」

天使の突拍子も無い疑問に思わず疑問符をつけて返してしまう。

「・・・誰が女神だ、俺は只の傭兵だ」
「・・・・・・僕には貴方が女神様に見えました。今も・・・」

随分しっかりしたお子様だなと天使に目を細めて見られているファイは思う。
淡い藍色の目がひと時もファイから反らされる事は無い。



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