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「・・・ぇ・・・・?」
(そんな馬鹿な!!)
「え?じゃねぇよ。知らなかったのか?」
「知るわけ・・・ねぇ・・・」
自分の腹を掻っ捌いて内腑ぶちまけながら自分の子宮の有無を確かめる馬鹿など居るものか、居てももう死んでいる。
そもそも自分はどう考えたって女なんだから子宮が無いなんてことは無い。
そういいたいのにファイの喉は声を発してくれない。唇が震えて言葉を紡げない。
ふと、犯されている天使の子供と目が合った。
青い目は濁っていて生への執着が何処にも見当たらなかった。嗚呼、殺される弱者と同じ目だと思った。
しかし苛立ちはない。寧ろ―――
(死なせては いけない)
直感的にそう思った。
しかしこの状態では何も出来ない。情け無いことに今ファイも捕われの身なのだから。
こういう状況に限って相棒はいない。
その考えを、この場に居る全員が変える事になる。バッドのある行動で。
「ちっ・・・しらけたぜ・・・この女の前で其の小僧殺せ。もう飛ばないんだからよこの羽もいらねえだろ」
そういってファイの制止の声も聞かずにバッドは風切羽を抜いた。
「「−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−!!!」」
はらりと堕ちた羽を見て、ファイと少年は声にならない悲鳴を上げる。
どくん
「っ!?」
血が少なくなって冷えていたファイの体が一瞬で燃え上がるように熱くなる。
どくん
「うぁ・・・!!」
先程の痛みなど赤子に指を掴まれただけだと思うくらいの、心臓に走る激痛。
どくん
どくん
「ぁ・・・ぁああ・・・!!」
頭に暗い声が響いている。
・・・セ
どくん
・・・ロセ
どくん
「・・・っああああ!!」
ド
コ
ク
ロ
ン
セ
!
「っいやあああああああああああああああああああ!!!」
頭の中で 何かが崩れる 音が響いた
「ガアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
最後の記憶は 自分の拘束具が無残に引き千切られる所。
驚愕する男どもの顔。自分の体から発せられるばきばきと骨が折れる音。
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