双神二重曲奏 | ナノ



8

「――――――――――――――――――――――――っっっ!!!?」







ファイは全力で自分の口を塞いだ。
そうでもしなければ喉が裂けそうなくらいの声を出しかねないからだと言う事を自分で理解したからかもしれない。
折角立ったのに体から全ての力が抜けばしゃんと勢いよく座り込んでしまった。
途端襲い掛かったのは強烈な吐き気。

「ぅ・・・げぇ・・・っ・・・!!」

胃液が口から滴り落ちていく気配を感じながら昨日から何も食べて無くてよかったと、
どうでもいいことを考えている自分にあきれを感じていた。
ファイは一頻り咳き込むと今度は覚悟を決めてもう一度明かりを灯す。再び眼前に広がった、地獄。




其処は 死体で出来た水溜りだった。





床は一面腐った血と新鮮な血が混ざり合って赤黒く、
ピンク色の塊や対象的な赤茶色っぽい黒い塊、白い欠片が散乱している。
塊は腐ってたりまだ新しかったりする肉の塊。
白い薄汚れた欠片は、小さい人の骨片。
天井からは拘束具と思しき鎖と鉄枷がぶら下がっていて、
いくつもある鳥籠を連想させる檻は床に当たる部分が紅黒く染まっている。

「"犯して殺す"・・・どんぴしゃだぜザビィの奴・・・」

一人ごちたそのときだった。
ばしゃんとファイの近くで飛沫音が聞こえた。

「!」

ファイはとっさに隠れようとした。
しかしこの空間には隠れるところはない。仕方なく音のしたほうへ奇襲をかけた。

「・・・?」

しかし其処には何も無く、いやあった。ファイの足元で息も絶え絶えの子供が。

「っおい・・・!」

声をかけたとき、子供は大きく痙攣を起こし、そのまま動かなくなった。

「・・・」

手足と顔の原型をとどめていないそれは腹から内臓を垂れ流していた。・・・子供の、少女の亜人だった。
ファイはそっとそれを置くと周りをよく見ようと大きめの炎を出した。


「よぉファード、こんな所で探検ごっこか?」
「ッ!?」


明かりに照らされたのはバッドの巨躯。凶悪な笑み。
焦ったファイは距離をとるためにバックステップした。
それがそもそもの間違いだった。
後ろにバッドの手下が構えており、鈍器のようなもので後頭部を思い切り殴られる。

「うあっ!?」

床に落ちると思っていた頭は髪をつかまり衝撃を逃れた。しかし

「ちいと寝てろファード、面白いもん見せてやっからよ」
「がは・・・っ!」

腐敗した血の水溜りの床に頭を叩きつけられファイの意識は途切れた。





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