双神二重曲奏 | ナノ



7

階段は長く一歩降りるほどに血の匂いが酷くなっていく。
人一倍五感が敏感なファイにとってはある種の地獄である。
気分は絞首台にいつまでもたどり着けない死刑囚だ。

(・・・我ながら下らない例えだな)

そんな事を考えながらも階段を降りていく。
血臭は更に酷くなり、それに混ざって腐敗臭も漂ってきていた。
もう引き返そうかと、ファイがそう思ったときだった。


ベシャッ


「!?」

何か柔らかいものを踏み、其の拍子にファイは転んでしまった。
下には水がたまっていたらしくファイは其処にダイブしてしまう。
その水の所為で掌の炎がじゅうっと音を立てて消える。
手を付いた先には何かぶよぶよしたものが当たっていた。
身を起こすと其処から血と腐敗したものが混ざった匂いが容赦なくファイに襲い掛かる。

「・・・っ」

ファイは一瞬気が遠のいた。
気絶するのを辛うじて耐え、ちゃぷと其の先へ手を付ける。
どうやらここが最層下らしく階段は無かった。
心なしか暗闇が強くなっている気がしたファイは立ち上がり、先程と同じように掌に炎を灯した。
明かりなんてつけなければと後悔したのは其の一瞬後。




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