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「所でファイちゃん」
「あん?」
「その腕輪、あれから何か変わった事あった?」
その腕輪とは、前回ファイが窮地に立たされた時に細剣に変わりファイの身
(と結果的にザビィの命)を救った【セイレーン】の事だ。
今もファイの左手首で白銀の光を放っている。
「・・・いや、あの一件以来何にも」
「そっか・・・何だったんだろうねぇ?あれ」
「・・・」
ファイは無言で自分の左腕を見る。
いつも通り、周りがどんな色でもでも決して褪せる事の無い煌きをもってその場に君臨している。
気味が悪くないのかと言えばそうではないと言い切れないのが本音だが、嫌な感じはしない。
「じゃあ俺っち自分の部屋行くわ」
「・・・なんで窓から入ってきたんだよ」
「んー気分?」
「本気で死んでくれ」
「まあまあ。そだ、ファイちゃん」
手をぽんと叩いてザビィがにっこりと笑う。
「なんだよ」
「ファイちゃんがもらってばっかだと俺様不公平だと思うのでちょっと一つだけ頂いちゃっていいかい?」
「・・・まあ、一つなら」
「ほんじゃ、お言葉に甘えまして。怒んないでね?」
「ああ?」
ファイが何をと聞く前に、ザビィが座り込んでファイの顎に手を添えた。そして
自分の唇とファイの唇を重ねた。
「!?」
ファイがひるんだ一瞬後にはお互いの顔が離れていた。
ザビィは立ち上がると片目を瞑り悪戯小僧のように笑う。
「一つなら良いって言ったのファイちゃんだからね。怒る権利無いよ♪」
「・・・」
「まあ俺様も男だったってことで」
じゃぁね〜を間の抜けた挨拶をして背中を向けたザビィの耳は真っ赤だったが
幸いな事にファイの角度からじゃ見えなかったのに加え、部屋の扉を乱暴に閉めた為ファイには見つからなかった。
自室に残されたファイはと言うと。
「・・・何がしたかったんだ?あいつ」
首を傾げて(ファイにとって)不可解な奴だとごちていた。
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