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この世の中、どうにかなる事よりもどうにかならない事のが多いもんだ。
例えば今、俺の目の前で相手の剣士に斬られて死んだ斧使いの戦士。
もしコイツが今の攻撃を受けず避けていれば、頭をかち割られずにすんだだろうとか、
もし受身でなく捨て身で攻めに転じていればもしかしたら死なずにすんだだろうとか。
それはすでに起こったことだからそういう予測が立てられるわけで。
実際既に死んでしまったこいつ(いや、もうこれと呼んだ方があっている)にはどうすることも出来ないわけで。
俺にだってどうすることも出来ないことの一つや二つはあるんだ。
「ようし、今日は引き上げだ野郎共!!」
野太い(もっと言えば聞くに堪えない)声でファイは我に返る。自分の周りは腕だの足だの、内臓だのが飛び散っていた。
改めて己の姿を見てみると例によって血に塗れ、黒い服さえもが紅に染まっている。
もちろんファイ自身は無傷なのも例によってである。
「・・・汚ね」
ファイは一人ごちて顔にかかった血を乱暴に拭う。
血は、取れる所か伸びて更に汚くなってしまう。
「オイ新入り!!バッドの兄貴が呼んでるぜ!!」
「・・・今行く」
ファイは呼ばれた方へ踵を返して行った。
残ったのは、腐敗しきるのを待つだけの無残な死体達だけだ。
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