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[戦いたいか娘]
(!?)
誰かがファイに語りかける。しかし其れらしい人物はいない。
[戦いたいか娘]
(・・・)
もう誰でもよかった、自分を又、戦わせてくれるなら。
(戦わせろ・・・!)
[・・・承知した]
かっと光り輝いたのはファイの左手首に君臨していた銀色の腕輪。
[望め、今貴公が欲する力の形を]
(・・・あいつを貫ける鋭さを寄越せ!!)
白銀の光が其の場全てを支配する。
[叫べわが名を、わが名は――――――]
「[セイレーン]」
「っつなんだこの光は!!?」
「ファイちゃん!?」
光が収まり立っていたのは四肢を完全に破壊されたはずのファイだった。
其の手にはいつもの両刃の剣は無く、代わりに銀色の細剣が握られていた。
「行くぞ」
そういったファイは誰の返事も聞かずにルルシアンに突っ込んで行き、切れなかった触手を刺し貫いた。
「なんだと!!?もう動けないはずだ!!何故動ける!?」
「切れなかったのに、なんで・・・!」
ルルシアンも自分の身に何が起きたのか分からず残った触手を振り回す。
混乱と驚愕が混ざり合ったこの場で、ファイだけが冷静だった。
[我が貴公の痛みを抑えておくのもそう持たない、一気に決めろ]
「わかってる!!」
ファイはこれまで出したことの無い速度でルルシアンに突っ込んでいく。そして突く。
突く 突く突く突く突く突く突く突く突く。
幻影さえ見えない速度でルルシアンの体を刺し貫いていく。
ルルシアンはとうとうただの肉塊になった。
どう、と重々しい音を立てて崩れ落ちる。
残された男は顔面蒼白だった。
「あ、あぁぁぁ・・・!」
「オイ」
「ひっ!?」
男のまん前にファイが立ちはだかる。其の目は冷ややかで、暗い。
「あ・・・そ、そうだ!お前達私の元に来ないか!?金はいくらでも出そう!!なんならここの幹部にでも・・・」
「煩い」
「あ・・・」
交渉してくる男の頭をファイは問答無用で刺し貫いた。
悲鳴も上げずに絶命した男を見下してファイは冷たく言捨てた。
「どんな条件でもテメエとだけは死んでもつるまねえ」
それを最後にファイは意識を手放した。いつの間にか細剣はなくなっており、傍らには銀色の腕輪が自己主張(いつも)のように輝いていた。
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