双神二重曲奏 | ナノ



4

「・・・腹、そんなに出るもんなんだな」

どことなく感心したように、しかし失礼なことを口走ったファイに思わずウルガが脇腹を小突く。しかしエミリやエドウィンは気にしない所か小さく笑った。

「ええ、そうよ。妊婦を見るのは始めて?」
「ああ」
「ふふっ、そう・・・よかったら触ってみる?」

小首を傾けながらそう聞くエミリにファイはぎょっとする。相当驚いたのだろう、身体が半歩後ろに下がっていた。
何をそんなに驚くんだとフリーズが見ていたらわななきながらファイはかなり、いやものすごく無教育むき出しのセリフを吐いた。

「いや・・・腹の中に手ェ突っ込んだらいたいだろ・・・?」
「違うわアホか!」

即座にウルガが突っ込む。そうなのか?ときょとんとするファイにザビィとフリーズが苦笑を漏らし、ハワード夫妻はやはり小さく笑っていた。

「確かにお腹に手を入れられたら痛いわ。だからこうやって・・・」
「え?わっ・・・」

車椅子で近づいたエミリはファイの手首を取って、その手のひらを自分の腹に当てる。突然のことに驚いたファイだが、手のひらから布越しに伝わる体温に目を瞬かせる。
とくん、とくんとそこにも心臓ができたように血液の流れる音が小さく、しかししっかりと伝わってくる。そのことに言葉をなくし、目をまん丸にするファイにエミリは再び小さく笑った。

「・・・ね?ここに、私の赤ちゃんがいるんです」
「・・・ああ、とくんとくん言って・・・!」

突然びくりと身体を硬直させるファイに四人は首をかしげる。エミリだけは嬉しそうに顔を綻ばせたのでエドウィンはそれで察したが。

「い、いま・・・」
「ええ、お腹の赤ちゃん、あなたの手のひらを蹴ったのよ」

ゆっくりと手を離したファイにエミリはにこりと微笑んで腹をさする。

「早く出たいようって、もう大きくなったから出してって大暴れ」
「ぁ、足グセ悪いんだな」
「うふふ、そうね」

とても嬉しそうなエミリの声を聴きながら、ファイは自分の手のひらを眺めていた。

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