双神二重曲奏 | ナノ



3

「……」

一行が当主の前に通される頃には、ファイの機嫌は最底辺に到達していた。めり、と音が聞こえて来そうな勢いで眉間に皺を作り屋敷内部を警戒し、完全に臨戦態勢である。
それを苦笑しながら見ていたザビィはふと表情を引き締める。その様子にフリーズとウルガも習う。ファイだけは仏頂面のままではあったが。

「ザンティス=アルビオ、只今帰還致しました」

普段とは似ても似つかない声音のザビィの言葉にウルガが吹田しそうになる。フリーズが肘打ちを入れるのと同時に入りたまえとドアが開いた。

部屋の最奥には二人、男女が静かに佇んでいた。男性の方が口を開く。

「長期にわたり凱旋ご苦労、ザンティス」
「はっ、私も長期間屋敷を留守にし兵たちにも負担をお掛け致しました」
「構いはしない、君は人一倍危険な任についてくれているのだから・・・彼らがそうかね?」

ザビィと話していた男性がフリーズたちに視線を向ける。ザビィがはいと答えるとフリーズが一歩前に出て頭を下げる。

「フリーデント=イスレイズと申します。後ろの二人はウルガ=ライディアノ、ファイ=ヴァルキュリア。彼には色々と尽していただいております」
「ザンティスの友人方だね?よく来てくれた」

フリーズの応答に頷くと男性は白髪交じりの頭を軽く下げる。

「エドウィン=F=ハワードだ。控えているのは妻のエミリ。近々我が子を出産する予定だ」
「へぇ・・・」

軽く会釈するエミリを、ファイはまじまじと見た。エドウィンより遥かに若そうな彼女はベージュの髪をウェーブにしており、やわらかな空色の瞳はおっとりとした空気を醸し出していた。その腹は大きく膨らんでおり臨月であることが伺える。


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