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ファイがこんな目に合う、数日前。
混沌の宿の一室にて、ザビィがフリーズにこう切り出したのが始まりだった。
「すまん、少しだけ別行動取らせてもらってもいいか?」
別にザビィが別行動をとるのは珍しくなく(むしろこんなに長期間行動を共にしている方のが珍しい )フリーズは得に何も考えず了解した。
「わりぃな、ただ…今回ちょーっと長ぇかも」
「なんで?」
「あー、俺のご主人の娘様もうじきご出産らしくてな。一回帰ってこいだとよ」
かりかりと頭を掻きながらそういうザビィに、そういえばザビィは隊長なんだっけと思い出して、ふとフリーズはなんとなくこう切り出した。
「だったら俺達も行っていい?」
「んにゃ?」
「これからの予定も決まってないしザビィがお世話になってる方のご出産なんでしょ?挨拶兼ねてお祝い位させてよ」
「にゃー…俺様はいいけどさ…」
「よし決まり!次はザビィについてくよ」
「あいつらの意見は無視か!」
そえツッコミを入れたのだがフリーズには届かなかった。
「やっと布団で寝れるよ・・・」
「それが目的かよ!?」
うっかり自分の希望を口にしてしまっている幼馴染にザビィは全力で突っ込んだ。
「お前の主はマジでなんなんだ」
そういいながらじろりと自分を睨んで来るファイにザビィはそういう人なんだってと苦笑した。結局この二人の言い分はフリーズには通用せず(珍しく黒いフリーズが光臨していた)強制連行という形でザビィの主人の館の前にいるのである。
「しょうがないだしょー?ここいらで一番偉い人なんだから」
「だからと言ってぶら下げる意味が分からん」
「まー確かに古風っちゃ古風だけどねん?」
「大体正面玄関に罠仕掛け・・・わきゃぁ!!?」
ぶちぶちと頭にこぶを作ったザビィに小言を食らわせていたファイだったが、突然悲鳴を上げたと思ったら姿を消す。え?え?と困惑するフリーズとあっちゃあと頭を抱えるザビィを尻目に、ウルガは噴出した。
「おま、また引っかかるなよ」
「うっせぇ死ねウニ!!」
落とし穴の底で泥だらけになっているファイに手を伸ばしているウルガとは対照的に青と黄色は何故か顔を抑えていた。
(わきゃぁ・・・わきゃぁって・・・!!)
(くそ、録音しときたかった・・・!!)
極稀にしか聞けない高い声に赤面を抑え切れなかったのだ。ああ悲しきかな男の性。ザビィに至ってはもう鼻血が止め処なくあふれている。
そんな二人の様子に、ウルガはいやまずどっちか穴から出してやればよかったのにと突っ込んだ。当然、脳内のみで。
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