3
フリーズたちが属している軍の砦の酒場にて。
「お前、何人?」
「30人。ノルマ達成」
「温っ!俺150人だぞ!?」
「お前と一緒にすんなや!」
そんな口喧嘩をしているのはザビィとウルガだった。やはり前衛と後衛とでは違うらしく、ぎゃあぎゃあと騒いでいる。お冷をちまちま飲みながらフリーズは二人の会話を聞こうとして、やめた。
ふと、ファイが視界に入ったのだ。
疲れたのか軽く閉じられた目蓋を長い睫が縁取り、重力に逆らわない髪はさらりと肩を伝い椅子へ落ちている。うっすら開いた口からは犬歯がちらりと見え隠れしている。
微動だにしないその姿はまるで人形のようで、
「----------------っ」
死体のようにも見えた。
大げさにびくついたフリーズに気がついたのかザビィとウルガがすぐさま反応する。
「ふーちゃんどったの?」
「虫でもでたのか?」
「それはお前だっちゅーに」
「黙れハゲ」
「ハゲ!?ハゲてないわよ!?」
再び始まった口喧嘩には目もくれず、フリーズはファイを凝視していた。
呼吸で僅かに上下する胸を見て、ほっとする。ほっとしてからフリーズは二人に声もかけず当てられた部屋へ駆け戻った。
思い切りドアを閉めそれにもたれかかるようにずるずると座り込んだフリーズの顔は真っ赤に染まっていて。
(・・・そんな馬鹿な)
自分の中にはないと思っていた酷く欲的なことを考えた自分に絶望した。
そんなフリーズの心境など知る由もない二人は、首をかしげていたという。
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