双神二重曲奏 | ナノ



2

報酬が良いからとザビィが取ってきた仕事が、この戦争だった。
聖戦−−−詰まるところの宗教戦争だ。フリーズ達は傭兵なので戦争に出ること自体は珍しくない。だが、こう言った宗教間での戦争は始めてだった。
正直な話、フリーズはこの仕事を引き受けたくなかった。「一人殺すごとに10万」、このゲームのような表現の仕方に寒気を感じたのだ。しかし、ファイの一言により、参加が決定した。

「宗教戦争ほどギャラの良い職場もねえだろ」

そしてこの一言は、不思議な程フリーズの中に染み込んで、納得させた。
それは、ファイ自身が神たる所以に響いた言葉だったのかも知れない。彼女自身、どう思っているか疑問だが。
フリーズも神に仕える身分だが、戦争を起こしてまで相手に信仰を押し付けようとは思わない。と言うよりか最近は神とか何とかはどうでも良いとさえ思っている。

(まあ、身近に神様がいちゃあ、ね…)

自分目掛けて突き出した槍をうけとめる背中を見ながらフリーズは苦笑する。やっぱり酷い色になっている。しかし、翻る豪奢な紅金の髪は血の赤より鮮やかで。

「フリーズ、撤収だとよ」

感情の薄い蒼銀の瞳は頭を貫かれ斃た男を見ても揺らがなくて。


ああ、やっぱり違う生き物だなと、差し出されたファイの手を握りながらフリーズは立ち上がった。



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