28
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死に掛けてて幻でも見たんだろ」
果てなく長い沈黙の後、ファイは目を泳がせて一言そういった。
「いいや!絶対言ったもん!」
「俺様も聞いたー!!ファイちゃん言ったー!!」
「えー!!俺も聞きたかったぜ!!」
「言ってない!!言ってねええええ!!」
長いソファーで4人はもみくちゃになってじゃれた。ファイが照れているのは一目瞭然で、いつもの仏頂面が赤くなっている。
それに認めないとやめないといってザビィがくすぐる。ファイがくすぐったさに暴れ、それにフリーズとウルガも参戦する。たまにファイがウルガを身代わりにしたりフリーズが標的をザビィにしたりと小さな子どものように声を立てて笑った。
一体、どれだけの時間が過ぎたのか。4人はぐったりとなっていた。体がいくら大人だからといって子どもと同じことをして疲れないなんてことはないらしく、息を切らしていた。
「・・・言ったよ」
ファイがぼそりと言った。3人が視線だけをファイに向ける。独り言のように言っているファイの表情は穏やかだ。
「仲間って、言ったよ。最初は利用するつもりだった。それだけだった。利用価値が無くなったら棄てるつもりだった。でも、闇風に殺されかけたお前ら見たとき、正直怖かったよ。なんでだろうな、最初から一人で、お前らがいなくなったらまた戻るだけなのに。怖かった」
誰も、口を開かずにファイの言葉を待つ。よく考えたらファイがこうやって自分の気持ちを口にしたのは初めてなんじゃないかと思った。
「シャルが死んだときさ、どうしようもなく虚しくなった。何か欠けたみたいになって虚しくて自分じゃどうしようもなくて、それで苛々して。頭ごちゃごちゃした。自分の正体知ったときよりも、ずっと。でも、死に掛けたお前ら見て分かった。・・・怖かったんだ。また誰かいなくなるのかって。もしかしたらみんないなくなるのかって思って。変だな、この世界で死ぬ事は生まれることより当たり前なのに」
まるで懺悔のようだった。自分が当たり前に奪ってきた命に対してと、シャルという命を守れなかった事に対しての。
[ 152/164 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]