双神二重曲奏 | ナノ



2

がやがやと騒がしい酒場。混沌【カオス】と呼ばれている地域にしては比較的安全かつ治安の良い場所だ。
そもそもこの世界は楽園【エデン】と言う地域と先程の混沌と言う地域に分かれている。
大昔は分かれてはなかったが、何やらでかい戦争の所為で世界中が混沌に成り下がり、
只今現在進行中で回復しているらしい。
回復したところを楽園というらしい。楽園では神々の世界に自由に行き来できるらしい。
・・・『らしい』と言うのはファイにとって素晴らしくどうでもいいことなのであまり知らないからだ。

「おい、其処の赤毛の兄ちゃん」
「?」

ふと、誰かに呼ばれ(それが自分だと分かるのは自分以外に赤毛と称される人間がいなかったからだ)ファイは顔を上げる。
食べていた鳥の腿肉の丸焼き(もちろん骨付き)は口に入れたままである。

「はへは?」
「俺だ俺、っちうか其の口の中のものおいたらどうだよ?」

振り向くとひょろっとした男がファイの背後に立っていた。
黒が主な服を着て、背中に身の丈ほどの槍を背負っている。
軽く引きずっている黄色の三つ編み、顔にかかるくらい長い前髪は一部黒く染まっている。大きい目は若葉色をしていた。

「・・・はれは?」
「ひどっ!2回くらい一緒に戦ったじゃないのさ俺ら!!」
「ひはんは」
「ひっどいわー・・・ファイちゃんったら数ヶ月前の戦友の名前も忘れちったの?」
「ひぇんひゅうひゃんひぇひはん」
「ホントにひっでえ!!ちうかホントに其れ口から放せ!!それとも何か、俺より肉のが大事なのねん!!?」
「ふん」
「ぐあああ超ショック!!」

オーバーリアクションをかます男には目もくれず、と言うかもうむしろ存在さえ無視して黙々と食事にいそしむ。
皿に残っている肉はあと2つ。それ以外はこの男が来る前に食べてしまった。
もちろん優先順位は食事>男である。


「俺だってば!ザビィ!!!ザンティス=アルビオ!!」
「・・・」

男曰くザビィはファイの顔面ギリギリに顔を近づける。
対するファイは物凄く迷惑そうにもしゃもしゃと咀嚼している。

「君の腰にぶら下がっている剣を交渉してタダ同然に買い叩いたのは俺っちだよ!!?
其れを忘れたとは言わしませんぞ!!?」
「・・・」

その言葉に凄まじい勢いで顔をそらす。どうやらとぼけていたのは其の所為のようだ。



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