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瞬殺された部下達を見、戦慄するレンドルーア侯をフリーズが見た。見ただけだ。まるでその辺に転がっている石でも見るように。
其の中に僅かな軽蔑と侮蔑の感情が篭っていた事を、果たしてレンドルーア侯は読み取れただろうか。
フリーズは特に何をするわけでも無く、すでにサタンに向き合っていたザビィとウルガに倣い敵を見据える。
矢張り、恐怖は抜け切らない。
「・・・やっぱ怖いわ」
ザビィがぼそりと口にする。雷帝が傍らに控えているとはいえ、矢張り槍がないのは大きな痛手だった。
ウルガは一応弓矢と拳銃を持ってきていたが、それが通用しなかったのは先程の通りだ。
ならば、今回の主戦力はフリーズと言うことになる。しかし。
(駄目だ、倒せる気がしない)
以前戦ったとき力が増しているような気がするのだ。ウルガの言うとおりなら、 ファイの血を受け継いでいる可能性も有る。
そんな不安を消すように、ザビィとウルガが話しかける。
「よーっしゃ、おにーさん本気だしたらぁ!」
「雑魚の底力、見せてやんよ!」
馬鹿みたいに大声で怒鳴った二人の声は震えていたが、士気が上がる。これで声が裏返っていたらさしものフリーズも残り僅かな勇気も霧散していたかもしれない。
「素敵だね、じゃあ俺も頑張ろうかな!」
両頬をべちんと勢いよく叩く。もう、あれを隠せない。隠すつもりもない。隠していたら、取り返せない。
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