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『・・・』
それは、ファイを見て何を思ったのか抱きかかえて部屋の隅へ行ってしまう。取り残された女たちは只震えるだけだ。
『ハ、ハ、サマ・・・』
女性特有の声がファイに話しかける。
『ハハ、サマァ・・・』
貴女と同じくらい 美しくなりたい
だってワタシは 貴女の娘
それなら もっと もっと モット
キ レ イ ナ オ ン ナ ヲ タ ベ タ イ ナ ァ
そして再び、始まる宴。
其の頃、ウルガは走っていた。今のフリーズとザビィははっきり言って使い物にならない。だから場所を聞いて走っていた。
「・・・」
自分よりはるかに強い二人があの怯えようなのだ。自分が行った所でどうこうできるレベルじゃないのは分かりきっている。只、ファイがいないこの状態で何も調べず帰ることはできなかった。
「くそ・・・」
最悪、あれを使って対処すべきだと思う。しかし。
(未熟な俺が使って、無事な保障がねえ)
暴走する恐れが有る。否恐れでもなんでもなくこれは暴走する事を前提に考えて行動すべきだ。精神状態がベストコンディションでも暴走するのだ、まして今回は恐怖の対象がいる。暴走しない確率のが低い。
それでも、ファイを見捨てる事はできない。
(・・・あいつがいると、ザビィがいつにも増してよく笑うし)
(あいつがいると、フリーズがめちゃめちゃ優しいし)
(何より俺が一緒にいて楽しいし)
ぼんやりとそんなことを考える。この面子で唯一(見えないが)紅一点で自分の友人の想い人なのだ。ウルガ自身、ファイを友人と思っていたし、ファイもシャルが死ぬまではそう思っていてくれたはずだ。年が近いからか、よくいろんなことを話した。
彼女がいるから、こうして危うい関係は繋がっているのかも知れないとウルガは思った。
それを、こんな所で手放してなるものか。
みんなを繋ぐ、ファイと言う名の鎖を。
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