16
「・・・」
感情のともらない目が、シャルの名前を見ている。おもむろに自分のホルダーに仕舞っていた剣を取り出して墓に突き立てる。
誰かが見ていれば非常識だと喚いただろう。だが、此処にいるのはファイとシャルの二人だけ。
「破門だ馬鹿弟子。・・・じゃあな」
言葉は嘘をついた。師が、弟子に剣を贈るのは免許皆伝の証だ。
ファイは踵を返す。一度も振り返らず墓地から出て行った。誰もいなくなった墓地に、柔らかな風が吹いて生けられた花が揺れる。
まるでありがとうと、シャルが笑った 気がした
楽園【エデン】の門を出ると、フリーズ、ウルガ、ザビィが待っていた。
「ローランさんに挨拶した?」
「一応な」
そう言ってから目だけが門を見る。それだけだった。
「行くぞ」
誰も返事はしなかったが、付いてきているのは気配で分かった。
今は 其の気配が嬉しくて、恨めしかった。
紅い髪が翻る。只の一度も立ち止まらずに
更なる悲劇に身を投げ出した。
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