15
次の日。ファイは一つの墓の前にいた。
「シャーロノア=ウィン=ウォルダーホワイト」
墓に記されたのはシャルの真名だ。黄昏がファイを染め上げている。日の残照が目に痛い。
「・・・」
葬式は午前中に行われた。エイルカリアは己の部下の亡骸を見て、そうですかと冷静に告げた。其の肩が震えていたのは間違いないだろう。
きっと、自室で泣いていたに違いない。
ファイは葬儀には参加しなかった。いや、参加できなかったと言うべきか。エイルカリアにシャルを送り届けた時点で意識があったのが奇跡だった。下界に下りた途端全身がきしむように痛み、動けなくなったところをローランの部下に運んでもらったのだ。
町は、シャルとあの虫に食われた兵士以外被害はなかったらしい。3日前の活気が戻っていた。
ファイは『鬼紅蓮』の影響なのか、内臓がいくつか焼けて無くなってしまっていた。しかしそれも昼には元通りになり医者を驚かせた。
『あんた・・・化け物か?』
「ま、普通なら化け物・・・か」
墓石の前で、ファイが自嘲気味に笑う。その医者と入れ違いに入ってきた天使に言われた事を唐突に思い出した。
『貴女がシャルと出会わなければ、彼は死ななかった』
『貴女がいなければ、シャルは−−−−−−−−−−』
アリアとかいった、桜色の天使はそういって泣き崩れた。其のとき胸が痛かったのだが、何故かは理解できなかった。
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